こんにちは。
最近誕生日を迎えたのですが、まりもちゃんにはホールのケーキを買ったのに自分の誕生日はショートケーキでいいのか?という謎のジレンマに陥りました。
まぁ、まりもちゃんのケーキ食べてるのはまりもちゃんじゃなくて私なのですが。
さて、本日は、朝井リョウ著『死にがいを求めて生きているの』を読み終えましたので、感想を書いていきます。
死にがいを求めて生きているの あらすじ
■あらすじ
植物状態のまま眠る青年と見守る友人。美しい繋がりに見える二人の〝歪な真実〟とは? 平坦で争いのない「平成」の日常を、朝井リョウが現代の闇と祈りを込めて描く傑作長篇。
https://www.chuko.co.jp/tanko/2019/03/005171.html
「螺旋」プロジェクトとは?
「小説BOC」1~10号に渡って連載された、8作家による壮大な文芸競作企画。
以下の3つのルールに従って、古代から未来までの日本で起こる「海族」と「山族」の闘いを描く
https://www.chuko.co.jp/boc/spiral.html
「螺旋」プロジェクトという8人の作家による企画で生まれた小説です。
2つの種族の対立構造を時代背景や登場人物が異なる9つの作品で紡いでいくプロジェクトだそうです。
名だたる作家たちが参加していますが、今回の『死にがいを求めて生きているの』では朝井リョウさんがプロジェクトのルールを踏襲して平成を舞台に物語を繰り広げています。
死にがいを求めて生きているの ポイント
この小説のポイントを整理していきます。
ここからはネタバレを含みますので、見たくない方は渡辺直美さんが鬼滅の刃無限列車編を観ている動画でもみてください。
余談ですが、私は鬼滅の刃を全然知らなくて、この間地上波でやってた無限列車編が初見だったのですが、今炭治郎のセリフめっちゃ真似してます。炭治郎の心綺麗すぎで面白かった。煉獄さんのがすごいんだぞ〜!
あと、鬼滅隊はプロ野球球団みたいなもので、プロ野球選手を引退したOBが高校野球の監督になって高校生を育てて、その高校生がプロ野球の入団テストに合格したらプロ野球選手になれるというシステムだと聞いたのですが、あってますか?
■南水智也と堀北雄介
この小説では、章ごとに視点人物が変わるのですが、主なキャラクターとなるのが南水智也と堀北雄介です。
南水智也
冷静で穏やかな性格。
雄介からの無茶な要望にも応える。
大学では工学部生体情報コースを専攻している。
堀北雄介
小中高大、どの年代においても競争にこだわる性格。
智也とは幼なじみ。
この二人は性格的に大きく違いますが、長年友人同士です。
その点が小説の大きな肝にもなってきます。
■海山伝説、「海族」と「山族」
海族と山族というテーマが先ほど紹介した螺旋プロジェクトのルールの一つとなっています。
この小説中では、確証がない、オカルト的な陰謀論だが、実は信憑性があるのではないか?と考えられている説として描かれています。
海山伝説について簡単に説明すると、人類は、海をベースに生きる海族と山をベースに生きる山族に分かれていて、歴史上頻繁に二つの種族の対立が起きており、また、今起きている全ての争いの原因は、実はその一族同士の対立に起因しているのではないかという説です。
オカルト的なものと書きましたが、実は、智也の父親は海山伝説の研究者であり、智也は幼い頃からその思想を聞かされながら育ちました。
■生きがいとは
雄介はどの年代においても競争にこだわります。
例えば、運動会の棒倒し、テストの順位、ジンギスカンパーティー復活運動、学生寮自治存続運動などいつも何かに立ち向かっています。
ただ、雄介にとっては目立つこと、何かをしているポーズを人に見せつけることが生きがいとなってしまっており、物事そのもの自体、またはその先にあるものを大切にしているわけではありません。
一方、智也は、海山伝説を遺伝子的に否定しようと大学で研究するなど、父親への反骨を生きがいにしてしまっています。
死にがいを求めて生きているの 感想
■構成が秀逸
すごく面白い作品でした。
僭越ながら、螺旋プロジェクトのことを全く知らないまま読んだので、フワッと生死にまつわる物語なのかと思ってましたが、後半に行けば行くほど壮大になってびっくりしました。
雄介目線で進む章はないのですが、周辺人物が雄介の人物像を浮き彫りにしてくれる点もすごくよかったです。
周辺人物から見た雄介の描写もそうなのですが、周辺人物が少しずつ雄介と共通の素質を持っている点が雄介の人物像をより際立たせていました。
例えば、安藤与志樹という人物は、音楽で社会問題を提起する団体で活動しているのですが、実は社会問題に興味がないことを周りから見透かされている点や、競争を好む幼さという点が雄介と共通していて、弓削晃久という人物は、映像ディレクターとしての自分の才能が枯渇していることを知りつつも、何かを成し遂げた人物として見られたいという欲望を捨てきれずにいる点が雄介と共通しています。
雄介の目線で語らせずに、周辺人物から深みを持たせるところがすごいなぁと思いました。
■さすが平成生まれの作家
時々小説を読んでいると、価値観がアップグレードしていないというか、現代ではもうこんな感覚ないのではないかと感じることも多々あります。
例えば、いい旦那は愚痴をこぼさず働き、いい奥さんは優しい料理上手みたいなことですね。
近年刊行された書籍であってもそれを感じる作品は少なくありません。
でも、さすが現代作家朝井リョウさん。
その辺に違和感を持つ人物と持たない人物をきっちり両方の目線から描いていてすごいなぁと思いました。
女はちょっとした仕事で評価されていいよな〜、男はずっと神輿担いでないとダメだもんな〜と考える雄介や弓削、なぜ男は神輿、女は料理と決められているのだろうと考える亜矢奈や智也。
さらに弓削の上司の、ホモソーシャルどっぷりで生きてきた人なんだろうなぁと思うような言動が重要人物ではないのにくっきり浮き出ていました。
本当に人物像の書き分けが現代チックで素晴らしいと思いました。
■人間って怖い
多分そういう小説ではないと思うんですよ。
でも、最終章まで読んだ後に最初に戻って読み返してみると本当にあった怖い話?みたいな気持ち悪さがありました。
最初の章は美談のように語られているのですが、結局読み進めていくと雄介の異常さや考え方が分かってくるので。
あとやっぱり雄介大学やめてなかったのか、という呆れもありました。
■壮大だけど身近なヒューマンドラマ
設定されている海山伝説という壮大なテーマと、現代の人間らしさを見事に融合した作品だと思いました。
毎回、朝井さんの作品を読むと”今”の切り取り方が本当にすごいなと感じるのですが、今回もやはり風刺が効いていて凄かったです。
あと、どうでもいいのですが、”海族かもしれない人の目は青い”という描写がなんか中二っぽいのですが、知り合いに目がグリーンっぽい人がいて、その人は漁師の目が遺伝子してると思うって言ってました(その人は漁師じゃないけど、沿岸部出身)。ちょっと夢がありますよね。
全く螺旋プロジェクトのことを知らずに積読していたこの作品でしたが、なんとラッキーなことに同プロジェクトの伊坂幸太郎さんの『シーソーモンスター』も積読しておりました!
めっちゃラッキー!ラッキーなのか???
とにかく、この作品が面白かったので、次は『シーソーモンスター』に手をつけていこうと思います。
お付き合いありがとうございました。
では。
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