今の土地には今年の4月末から住んでいる。
大学生の頃に一人暮らしをしていたが、それ以降はずっと地元で暮らしてきた私にとって、新天地での生活は不安が多いものだった。
前職も7年ほどのキャリアになっていたので、それを失うことも不安だった。
知らない土地、知らない家、知り合いもいなければ、仕事もない。
なんだか家にいてもずっとどこか知らない場所に取り残されているようで落ち着かなかった。
また、家事は大方、機械がやってくれるから私がやるべきこともあまり多くない。
引っ越してきた当初は色々と計画があって、やりたいことがたくさんあった。
でも、実際は全く落ち着かなくて、一日中家の中をグルグルと歩いているだけだった。
犬も不安だと部屋の中を歩き回るよね。犬と同じレベルだよ。
どこかに出かけるのも不安。知らない道。知らないスーパー。
ずっと落ち着かない。
そんな状況が最近変わってきた。
なぜならば今住んでいるところも案外悪くないと思えるようになったからだ。
そのきっかけとなったのが、地元の友人との会話の中で話題になった”治安”について。
元々、私の地元は治安が良いと思っていた。
たまに泥棒もいるし、コンビニの前にはヤンキーか外国人が溜まっているし、街宣車や暴走族が爆音で走行しているけれど。
ゴミの日という概念がないアパートがそばにあるせいで我が家にゴミが飛んでくるし、結構痴漢も出るし、濡れたトイレットペーパーを車にぶつけられたこともあったけれど。
家の前でおじさんが若者にボコボコに殴られていたから警察に通報したこともあったけれど。
タンクトップ姿のおじさんが玄関の前で寝転んで星を見ていたこともあったけれど。
なぜか私の地元は治安がいいと思っていた。
怖い思いをしたり実際に被害を被ったりしたこともあるのに、なぜかそう思っていた。
実家に帰省している時、大声で歌いながら自転車を漕いで行く人の存在や道端に捨てられたゴミの多さに驚いた。
今までそれが普通だったから特段変に思わなかったのだけれど、今住んでいるところでは道端で大声で歌う人に出会ったことがない。
それから、信号待ちでトラックから出てきたおじさんが立ちションしている場面にも出くわしたことがない。
地元では同じ場所で3回見たことあるし、その他の場所でも結構いる。神出鬼没。
友人とそういった治安の話をしていたら、彼女も同じような反応をしていた。
「確かに地元の治安悪いと思って育ってこなかったけど、今住んでるところは治安がいいね。」
そう、その言葉に尽きるのだ。
母にもその話をした。
「治安が悪いって歌舞伎町みたいなことを言うんじゃないの?」
母は治安のハードルをものすごく低く設定していたようだ。
どうりで、私も気づかないわけだ。
ということで、帰省して家に戻ってきてから今の家に愛着を持てるようになった。
とっても静かだ。夜はこうでなくちゃ。