こんにちは。

最近気温の変化にやられて体調が悪いです。

やられっぱなしで、やり返す術がなく泣き寝入りです。

ムカつく!!!

 

さて、本日は、朝井リョウ著『正欲』を読み終えましたので、感想を書いていきたいと思います。

 

正欲 あらすじ

ここからは、本のネタバレを含みますので、見たくない方はONEUSの新曲MVでも見てください。

本のネタバレ見る人もmv見てください。

 

あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ――共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 絶望から始まる痛快。あなたの想像力の外側を行く、作家生活10周年記念、気迫の書下ろし長篇小説。

https://www.shinchosha.co.jp/book/333063/

なんとも、説明しがたいあらすじ…ですし、朝井リョウさん進化しすぎてて怖い。

メガ進化か?キョダイマックスか?

本当にすごい作家さんだなぁと改めて思いました。

 

正欲 登場人物

■寺井啓喜

小学生の息子が不登校になっている検事。

息子たちが学校に通わず、 YouTuberとして活動するのをよく思っていない。

 

■桐生夏月

ショッピングモール内の寝具店に勤める30代の女性。

水に興奮する性的趣向を持っており、人と深く付き合わないようにしているが、

佐々木との再会後、佐々木と形式上結婚する。

 

■佐々木佳道

夏月の中学時代の同級生。

中学時代に夏月と互いが水に興奮する性質であることを確認しあったが、それ以降転校しており深く付き合うことはなかった。

同窓会で、夏月と再会後、偶然が重なり、お互いを支え合う仲となった。

 

■神戸八重子

学祭実行員会に所属する大学生。

ダイバーシティーフェスという”多様性”に焦点を当てた企画を発案、担当する。

引きこもりの兄がおり、兄が見ていたアダルトビデオの影響で、男性に嫌悪感を持つ。

しかし、不思議と諸橋大也に大しては好意を抱き、理解者になろうと試みる。

 

■諸橋大也

八重子と同じ大学で、ダンスサークルに所属する学生。

一般的な男子学生が好むような会話や行為に嫌悪感を持つ。

実は、夏月と同じように水に対して興奮をする趣向を持っており、佐々木と繋がりを持つようになる。

 

正欲 ポイント

■多様性とは何か?

八重子は学祭で、ミス・ミスターコンテストを廃止し、もっと多くの人が参加できるようなダイバーフェスを企画します。

八重子たちは、同性愛を扱ったドラマのプロデューサーをトークゲストとして呼んだり、多文化の音楽をBGMとして使用したりと、”多様性”とその”繋がり”を意識した企画作りを行いました。

一方で、その企画に無理やり参加させられた大也にとっては辟易するものでもありました。

なぜならば、大也の性癖は、誰かに理解してもらえるものでも、もらいたいものでもないからです。

それは、佳道や夏月にも当てはまることで、”多様性”という耳障りの良い言葉からあぶれる人間がいること、そして、その人たちが表面化すると多くの人間は嫌厭するであろうことは本人たちが一番理解していることです。

いくらマイノリティーに焦点を当てたところで、そのマイノリティーの中にすら入ることができない人間がいるということに多くの人間は気がついていません。

 

■生きづらさを共有するということ

例えば、夏月と佳道は偶然にも”繋がり”を発見でき、日々を生きながらえることができました。

そこから輪が広がって、大也や矢田部に繋がって行きます。

それが、彼らにとってどれほど救いになったのか。

また、大也の生きづらさを共有したいと思っている八重子の存在が彼にとっては本当に邪魔でしかなかったのか。

 

一方、別の生きづらさを感じている不登校の啓喜の息子泰希。

彼は、同じ不登校児童の彰良と YouTubeを始めます。

泰希と彰良が仲良くなり動画を作り始めたことで、二人の間だけでなく、視聴者との繋がりができます。

また二人の母親同士が互いに不安を吐露しあったり、右近という人物がそれをサポートしたりと、いろいろな繋がりができました。

しかし、父親である啓喜は子供たちの行為をよく思っていないどころか、母親である由美や泰希の主張をはなから否定しているところがあり、完全に繋がりの中に入れていません。

それどころか、彼らが独自に自分たちの繋がりを作っていることすら気づかないままでした。

 

 

正欲 感想

■朝井リョウさんすげぇ

朝井さんの作品を読むたびに思っているのですが、ここまで人物の書き分けや繊細さを出せる作家さんって中々いないですよね。

個人的には、無意識的に、男性作家さんの作品って読みにくいなと感じることが多くて、人間としての強さに重点を置いていることが多い、もっと言えばマンスプレイニングごりごりで、ファンタジーとかSFとは違った意味で現実離れしすぎているなと感じるからです。

ある意味女性に過剰に女性性を持たせるとかそういった類のことですね。

朝井さんの作品では、どの性別視点であっても自然と人物像を捉えられる、つまりそれだけの想像力と描写力があることにすごく驚きますね。

 

■結局”正欲”ってなんだ

人それぞれ、”正欲”って違うんでしょうね。

夏月や佳道にとってそれが水であったように、無限にあるはずの人間の欲。

でも、今の世界では結局”異性愛”を”正欲”として生きる人間が多くて、マイナーの中のマイナーには目すら止まらない世の中ですね。

この作品を読んで、自分の視野の狭さを改めて感じましたし、その視野の外に気づいたことすらなかったなと思います。

結局、自分自身は異性愛者で既婚者という立場にいると何かジャッジする側にどうしても立ってしまうのではないか、では、その傲ってどうやったらなくせるのか…などと考えてしまいました。

 

■登場人物が魅力的

朝井リョウさんすげぇの話でもあるのですが、頑固者が最後まで頑固者だったり、最終的にそこまで思い到るんだ、というような人物がいたりと人物の性格がそれぞれ違って素晴らしかったです。

特に、印象に残った場面があって、夏月と佳道の同級生である修という人物が、キャンプ中に飲酒状態で岩場から飛び込んで亡くなってしまうという事件があるのですが、当初夏月と佳道は「私たちは酔ってる状態でここから飛び込んだり絶対しないよね」と修が自分とは全く違う種類の人間だと思いを馳せます。

しかし、後半になると佳道は、修が川へ飛び込んだのは、不安な気持ちもあったが、周りに囃されて多数の意見が普通と感じてしまった結果なのではないかと考えたからじゃないかと理解を示すんですね。

これが私はすごく心に残りました。

私も修に対してばっかじゃないの!?って思ってしまっていたので!でもばかだと思う!

 

あと、八重子についてもすごく印象に残りました。

それこそ、自分が何か行動したら何かが変わると信じ切っている若さ。

自分に自信はないけれど、トラウマもあるけれど、ぶつかっていこうとする清廉さ。

その結果、大也から見たらとてもうざい人物になってしまっているのですが、真面目だけど、冴えない大学生の社会に出る前の無敵感が素敵でした。

 

■現代の罠

自分が、不登校児の親だったらと考えるとやっぱり悩みますよね。

由美のように、学校へは行けなくても楽しく子供時代を過ごして欲しい、手段は選ばん!派になるか、啓喜のように、危険でめんどくさいことは避けさせたい派になるかどうでしょうか。

でも、なんでもない子供のチャンネルにくるリクエストとか絶対危ないじゃんと私なら思ってしまいますね。

大人になってから、幼少期の自分への大人の振る舞いについて考えてみると結構怪しいこと多かったですね。スイミングスクールとか…

それこそ、啓喜は反対するだけで、子供への危険などをそこまで真剣に考えていなさそうなところが大分むかつきました。

 

■圧巻のラスト

えーそういうことか!と思いました。

読んでいる途中から、矢田部という人物のバックグラウンドについて大丈夫かこれ?と思っていましたが、まんまと。

人間、舞い上がると見えなくなるところあるもんね。

ただ、夏月と佳道がそれぞれ「いなくならないから」と発言したところが希望が持てました。

 

終わりに

まーた長くなってしまいましたが、一気に読めてとても面白い、そして恐ろしい作品でした。

朝井さんの本もっとたくさん読みたいな。

今は、ソン・ウォンピョン著『三十の反撃』伊吹有喜著『犬がいた季節』を読み始めています。

ソン・ウォンピョン著『三十の反撃』は同著者の『アーモンド』が良かったので選びました。

伊吹有喜著『犬がいた季節』については、犬いたら楽しいだろうなと思って選びました。

 

では、みなさん良い読書、良い睡眠を!

では、また。

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