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【芥川賞受賞】おいしいごはんが食べられますように【感想ネタバレ】

こんにちは。

バーチャル高校野球で地方大会を見ているのですが、父母会の方達は帽子被ってるのに、チアは帽子なしでポニーテールで踊ってるのが気に食わなくて、むかついています。

帽子配布せえ!チアの頭焼けるど!

 

今回は、先日発表された芥川賞受賞作品に手を出してみました。

久々の本の記事になりますので、ぜひお付き合いください。

 

おいしいごはんが食べられますように あらすじ

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。

職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない人間関係を、食べものを通して描く傑作。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363638

 

高瀬 隼子(タカセ ジュンコ)

1988年愛媛県生まれ。立命館大学部文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞し、デビュー。著書に『犬のかたちをしているもの』『水たまりで息をする』(ともに集英社)がある。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363638

 

高瀬隼子さんの本は初めて読みました。文体自体はとても読みやすくてスラスラ読めました。

 

 

おいしいごはんが食べられますように 登場人物

これ以降はネタバレを含みますので、見たくない方は宮本佳林ちゃんが歌う夜に駆けるを見てください。

オーバーキル宮本

これほんとおすすめなんで見てください。

夜に駆けるのテンポで16ビートを刻み、歌詞一つ一つをしっかりと耳に届け、持ち前の透明感のある声でアイドルのキラキラ感を残しながらも、少しも音を外さないというオーバーキル技を使う、宮本佳林ちゃんさんです。本当に天才。

 

 

■二谷

食べることをめんどくさがる男性。

丁寧な食生活を心がける芦川のことを疎ましく思いながらも男女の関係を持つ。

芦川の作る食事に不満を抱き、食後にカップ麺を食べたり、手作りのお菓子を捨てたりする。

 

■芦川

丁寧な食生活を実践する二谷の同僚女性。

以前、パワハラで心のバランスを崩した経験があり、他の社員よりも軽い就業形態をとっている。

いつも微笑んでいるような女性で、職場に手作りのお菓子を持ってくる。

 

■押尾

二谷の同僚女性。

仕事が良く出来るため、芦川の仕事の尻拭いをすることが多い。

二谷には好意を持っており、よく一緒に飲みに行く。

 

 

おいしいごはんが食べられますように ポイント

 

■それぞれの食事、それぞれの仕事

二谷は食事に興味がありません。

できればカプセルで栄養が取れたらいいのにと思う程に食事を重要視していません。

その一方、芦川は、何よりも丁寧な食生活が人生には必要と考えているタイプで、二谷がそんなことを考えているとも思わずに栄養バランスが取れた食事を彼に作り続けます。

また、二谷や押尾は遅くまで残業したり、繁忙期には休日出勤をしたりするのですが、芦川はそんな働き方はしなくても良いと上司たちから配慮され、少しでも体調が悪ければ早退をします。

主に男性の上司たちは芦川を庇い、大切に扱っています。

その一方、押尾は偏頭痛持ちですが、芦川のように体調不良を人に訴えたり、配慮してもらおうとすることはありません。

 

■二谷の屈折した性格

二谷は、主に食事のことで芦川にイラついているのですが、それでも部屋に芦川を招き食事を作ってもらい、お付き合いを続けます。

そして、芦川が職場で振る舞うお菓子には極力手をつけず、人気がない時に、潰して捨てます。

ある時、お菓子が捨てられていることが社内でバレて問題になり、押尾が吊し上げられるのですが、それを庇うこともありません。

この人の目的は何なのだろうと全く掴み所がありません

 

■弱者と強者

芦川は、以前パワハラに遭い、身体も弱いため周囲から配慮を受けています。

一方、同じ女性社員である押尾は、高校時代チアリーディング部に所属し、元気な人として認識されています。

しかし、実際は押尾も体調が悪い日だってあるし、芦川の仕事のサポートで残業をしなければならない日もあります。

その構図は、単純な弱者と強者の構図と捉えるわけにはいきません。

また、押尾は何とか自分でやらないといけないと考える人柄で、芦川の対比として描かれます。

果たして、芦川は単純に守られるべき存在で、押尾はあらゆる仕事をしなければいけない存在なのでしょうか?

 

 

おいしいごはんが食べられますように 感想

 

■タイトルに騙されるな!不穏な小説

私は、食事系小説に全く興味がないのですが、例えば『食堂かたつむり』や『ランチのアッコちゃん』などは、食事を通じて元気をもらえる、ほっこり小説ですよね。

ところがこの『おいしいごはんが食べられますように』はほっこりタイトルの仮面を被った、人間群像劇です。

視点人物が頻繁に変わるので、そこが少し読みにくいと感じたのですが、その影響で、皆が不穏な人物として感じられました。

例えば、二谷なんて、芦川を疎ましく思っているのにお付き合いどころか結婚まで考えてしまうところが本当に謎だし、芦川は体調不良で早退した次の日に、手作りのお菓子持ってくるし、押尾は二谷が捨てた芦川の手作りお菓子をわざわざ芦川の机に置くし、気持ち悪さを感じました。

 

■自分の食事観を再確認する

この小説は、読者がどの人物に感情移入するかによって感想も大きく変わりそうだなと思いました。

私の場合は、うーん、一番は二谷でしょうか。

私も食事がめちゃくちゃ面倒くさくて、おいしいものは食べたいけど、そのために労力が要るなら食べなくてもいいやというタイプです。

特に料理することも嫌いなので、もう食べるのも食べ物を用意するのも面倒くさくて心が荒んだりします。

特に平日の昼は、大体お菓子食べながら牛乳飲んでお腹を膨らませるというダメなことをやってますね。

あと、文中にあったのですが、芦川が持ってくるお菓子をいちいちオーバーにほめて、お菓子を配る時間を割いて、いちいち感想を言わなくてはならない、その行程が必要なくらいならもういらないよ!って私も思います。

例えば、前職の時は、上司がカニ食べに連れてってやるぞー!って言っても、上司を接待しながら食べるカニなんて家で食べるカップ麺の方が絶対においしい!と本気で思っていました。

そんな私ですが、私の夫はめちゃくちゃ食べ物にこだわりのある人なので、夫婦間の揉め事の多くは食事に関連しています。

夫は、私と同居する前、午後11時くらいに仕事から帰ってきて、グラタンを作って食べると言っていて、本気で驚いた経験があります。

そんな人間おんのか!?くらいの衝撃を受けました。

作中の二谷は、仕事から遅く帰ってくるのにそんなことをしていたら自分の時間が取れない、そこまでして食事ってちゃんとしないといけないのか?と考えるシーンがあるのですが、私の夫の場合、自分の時間よりも何よりも食事に重きを置いているということで、この本を読んだら私とは全く違う感想を持ちそうだなと思いました。

 

■おいしいごはんが食べられますように

このほっこりタイトルなのですが、読後には深い意味が感じられるようになりました。

私もずっと思っていたのですが、”みんなで食べるご飯はおいしいね!”って本当なのかな?

二谷のようにいわゆる正しい食事を疎み、栄養補給だけしたいという気持ちの人は絶対思わないですよね。

なのに”みんなで食べるご飯はおいしいね!”は正しいことだと、良いことだとされている現実があります。

人間は人それぞれなのに、食事に関することは善と悪がはっきり決められているような気もします。

偏った食事は確かに健康には悪いのだろうけど、バランスが整った食事だけが善であるのも面白くないなというのを感じました。

 

■押尾vs芦川

芦川の身体が弱くて無理が出来ないというのは分かるのですが、そもそも無理をしないようにしているという印象が強かったです。

押尾と芦川が猫を助ける場面があるのですが、芦川は押尾が猫を助ける姿を見てすごい!私にはできない!と言います。

でも、実際、芦川はチャレンジすらしてないのです。

また、芦川の実家の犬が芦川のいうことを聞かないから、芦川と二人では留守番出来ないという場面でも、チャレンジすらしておらず、家族からも”出来ない”ことを前提とされているのです。

その生き方って、実は他者の視線をあまり重要視してないからできることだよなとも思いました。

特に、配慮してもらって早く家に帰らせてもらっている芦川が、毎日手作りのお菓子を持ってきていたら、二谷や押尾だけでなく、「いや!早く帰ってそんなことするなら、もっと仕事しろよ!」とか「いや!早く帰ってるんだから、早く身体休めろよ!」と思う人がいてもおかしくないと思うんですよね。

そして、材料費を払わなければならないと周囲の人が気にし始めたりするのもバツが悪いじゃないですか。

それでもお菓子作りを続ける芦川は、他者の視線をあまり意識していないのだろうと思います。

 

一方、押尾は慢性的な偏頭痛を患っていても、それを他者に悟られないようにするし、芦川の仕事の尻拭いはするし、それでストレスを溜めるし……

働き方が芦川とは全く違いますが、そもそも、評価されずとも与えられたこと以上はやらなくてはならないという意識が強いのだと思います。

それって、責任感の問題もあるけれど、自分が出来ない人間だと思われることが不本意という意味もあり、他者の視線を感じている証拠だと思います。

表面的な弱者は芦川ですが、実は弱い立場なのが押尾という構図がまた不穏で面白かったです。

 

■芦川を繊細ヤクザで片付けてはいけない

ー誰でも自分の働き方が正しいと思っている

この小説は、誰に感情移入するかで感想が変わると書きましたが、私は、芦川の立場を軽んじるのは良くないなと思いました。

年間何万人という人が仕事で心を病む日本で、無理をしない働き方をする人が疎ましく思われる職場だと、他の人も病んできちゃうのではないかと思うのです。

心の問題だけでなく、ライフステージの問題で働き方を変えている人たちに対してもそうです。

仕事が回らないのは、マネージメント側、会社側の問題で、決して残業や休日出勤をしない人のせいではないというのを覚えておきたいなと思います。

でも、実際問題、そこがうまくいっていないから押尾のように皺寄せがくる人がいるんですよね……。

 

私は、前職の時、1ヶ月に1回くらい2時間くらい電車に乗って本社の会議に参加していたのですが、ある時パニック障害が再発してしまい、電車に乗れなくなりました。

それを上司に話すと、会議には参加しなくて良いと言ってもらったのですが、それ以降、私に対するあらゆる注意は上司からではなく、同僚の女性の先輩からされるようになりました。

多分、私に厳しく注意すると精神が参ってしまうと思った上での配慮なのだと思うのですが、その先輩からしたら関係ないわ!って話で非常に申し訳なかったです。

だから、私、芦川さんの立場って押尾さんからしたら羨ましいものだと思うのですが、実際芦川さん的立場に立ってみると肩身狭すぎて辛かったです。

今日自分語り多くてすみません。いつもか。

 

■余韻が残る小説

初め芥川賞ということでしたが、傑作!面白すぎる!ということはなく、期待しすぎたのかな〜と思っていましたが、読了後に残る気味悪さみたいなものがすごくあって、こういう点も評価されてのことだろうなと思いました。

本当に、影響力がすごくて、ご飯食べるのが嫌になりました!!!!

 


ということで、『おいしいごはんが食べられますように』の感想でした。

もっと上手にまとめたかったのですが、考えがまとまらず、上手く書けなくて残念ですが、読んでくださってありがとうございました。

みなさん、それぞれおいしいごはんが食べられますように!

では、また。

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