こんにちは。
秋ですね。
モンブラン食べて食欲の秋、昼寝して睡眠の秋、そして湊かなえ著『未来』を読んで読書の秋を楽しんでいます。
あと、運動の秋…か。仲間ヅラしてきてうざいな。
一気にテンションが下がってしまいましたが、湊かなえ著『未来』の感想を書いていきます。
未来 あらすじ
こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです」ある日突然、少女に届いた一通の手紙──。家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちに待つ未来とは!?
https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-52487-1.html
湊かなえさんの作品だと『Nのために』が好きです。
(※大学時代の友人なっちゃんへ もう貸してから10年くらい経ってるよ!そろそろ返して!)
こちらの作品も同様にミステリーなのに、登場人物それぞれの苦悩がスッと入ってきてしまうような読みやすさがありました。
未来 登場人物
ここからはネタバレを含みますので、見たくない方はメイクアップアーティスト小田切ヒロさんの自宅でも見てください。
なんか知らんけど、セレブってでかいローズクウォーツ持ってるよね!?
ミランダカーも鞄に入れて持ち歩いてましたよ。そんな効果あんの!?
■章子
章子が小学4年から中学3年まで、未来への自分宛の手紙を通じて日々を綴る。
章子
小学四年生の頃に、未来の自分からの手紙が届いたことをきっかけに、未来の自分宛の手紙を通じて日々の出来事を書きとめる。
父を亡くした後は、精神的に不安定な母親と二人で暮らす。
勉強がよくできるが、中学ではいじめの標的になり不登校になる。
父が残したフロッピーディスクの存在から、父と母の過去を知る。
文乃
章子の母。
精神的に不安定であり、何も出来ない人形の日と少し活動的である人間の日がある。
周りから一目置かれる美貌の持ち主。
夫との死別後は、職場で出会った早坂と生活を共にするようになる。
亜里沙
章子の同級生。
母を亡くしており、家庭環境が良くない中で、弟のことを大切にしている。
章子とはいつの間にか親友と呼べるような間柄になる。
亜里沙も実は未来の自分からの手紙を受け取っている。
早坂
文乃が職場で出会ったフランス料理の料理人。
職場から独立してフランス料理店を開く。
文乃とは事実婚という形をとっているが、実際には母子手当てをあてにしたり、章子の父親の保険金を使い込んだりして利用している。
店の経営が上手くいかなくなるにつれ章子に暴力を振るうようになる。
その後、文乃とは破局したように思えるが、人材派遣会社を経営し、そこで文乃を雇うなどつながりが切れない。
須山
亜里沙の父。
子供に暴力を振るう。
その一方、早坂とは古い付き合いで、フランス料理店や人材派遣会社などを共に経営している。
亜里沙の弟を死に追いやった原因を作る。
■エピソードⅠ
主な登場人物と時間軸は”章子の章”と同じ
智恵理
章子や亜里沙よりも2歳年上で定時制高校に通う高校生。
元々は、県営住宅での亜里沙の知り合いであったが、母親が弁護士と再会し、新しい家へ引っ越す。
解離性同一障害で”竜崎”という男性の別人格を持っている。
実は、義父から性的虐待を受けており、自宅に放火をした。
■ エピソードⅡ
章子の小学4年時代の担任の生い立ちが描かれる。
篠宮
章子の小4時代の担任。
父親、母親に相次いで幼い頃に捨てられ祖母に育てられる。
教師という夢を追って、東京で大学生活を送るが、育ての祖母が亡くなり、音信不通だった母親から祖母の遺産を請求され、金銭的に困窮する。
その結果、アダルト向けのカラオケ映像に騙される形で出演してしまう。
そのことをのちに校内で糾弾され、退職を余儀なくされる。
実は、章子と亜里沙へ未来からの手紙を書いた張本人。
原田
篠宮の恋人。
篠宮が例の映像に出演したことで関係を終わらせるが、その後も篠宮のことを気にかけている。
大学卒業後はドリームランドで働いている。
■エピソードⅢ
若き日の章子の両親についてのエピソードが語られる。
樋口
若き日の章子の父。
外見はあまりよくないとされているが、勉強が出来て優秀。
森本にからかわれる形から仲を深めていくが森本を警戒している。
森本
眉目秀麗であるが、樋口からは悪魔だと称される。
人を試すようなそぶりをしたり、見下した態度をとる。
それを注意した樋口に興味を持ち、ある計画に協力させようとする。
父親は、県議会議員で母親は自殺している。
真珠
兄以上に麗しい見た目をしている。
不登校で精神状態が良くない。
実は、兄に身体を売らされているばかりか父親から陵辱されている。
樋口にはお菓子作りを通じて本来の感情をとり戻しているかのようなそぶりを見せる。
実はのちの文乃である。
未来 ポイント
■ドリームランドと未来
時系列で辿ると、森本家で火事が起きた時、真珠がドリームランドへ向かおうとしていたり、
篠宮が映像の件で失意の中にいるときに、ドリームランドを楽しんだり、
章子が病に伏せた父親と、あるいは亜里沙が死の直前の弟とドリームランドへ行こうと約束したり、
殺人を試みた章子と亜里沙がドリームランドへ向かったりと、
ドリームランドの描写はその時点での陰の描写と共に未来への陽の描写と対で登場しています。
夢の国の明るさと、自分たちの境遇の暗さの対比がポイントとして上手く働いていたなぁと感じました。
■機能不全家族
一般的に見ると樋口以外は機能不全家族に当たるのではないかと思います。
篠宮も祖母から愛情を受けて育っているのでちょっと違うかもしれないですね。
子供が子供らしくばかなことをやったり、それを糧に成長していくというのは、家庭が正しく機能している場合によるもので、章子や亜里沙、智恵理などはその機会を失ってしまっています。
作者あとがきにも書かれていましたが、これは物語だから誇張されているのだという感想だけではなく、実際にどこかで頻繁に起こっている事態だと意識するべきだと思いました。
■ それぞれの心の守り方
例えば、真珠(文乃)は自分の中でオンとオフを作ることで、章子は文章にぶつけることで、亜里沙は攻撃的になることで、智恵理は別の人格を作ることで、森本は悪魔になり切ることで自分の心を守っていました。
それぞれの境遇を考えるとそれは必然なのですが、読んでいるこちらは心が痛くなりますよね。
未来 感想
面白かったです。
本当にどんどん引き込まれていって時間をかけずに読むことができました。
所々、予想できる展開はあったのですが、しっかり楽しめました。
作者の湊さんがこれは現実にある物語だと書き記して下さったことで、やはり逃げ場のない子供の存在を意識しました。
この本を読んで、章子や亜里沙の行末を想像するというより、親が子供を利用したり、子供を無視したり、教育機関が積極的に家庭に介入することがなかったりすることで見過ごされている現実の子供達のことを思うとやはり気持ちが下がります。
ただ、この作品のタイトルが未来であること、そこにとても重要なメッセージがあると思いました。
最後に、章子と亜里沙が自分たちの境遇を抜け出そうと自ら動いたその瞬間がもう未来だったと思います。
この作品は、大人向けの作品ですし、同じ境遇にいる子供たちにどう写るかは判らないけれど、そんな風に誰かに助けを求めても良いということを私含め、大人はもっと発信していくべきですね。
本日も、長い文章になってしまいましたが、とても満足な一冊でした。
では、また。
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