こんにちは。
またピクミンの話になるんですが、ピクミンってまず苗から生まれるんですよ。
で、どこで拾った苗なのかで、最終的にどのデコピクミンになるかが決まるんですね。
だから、今持ってるピクミンと被らないように、砂浜に行ってみたり、海に行ってみたりと色々してるのですが、駅ピクミン!いくら駅の近くに行っても苗貰えなくて、非常に萎えてます。苗だけに。
最寄りの駅も何度も行ったし、昨日今日は隣駅まで行ったんですが手に入らず。。。
体力だけが減っていく、いや、でもそういうアプリ、なーんてちょっと不満をぶちまけてしまいました。
さて、本日のテーマは久々にブックレビューです。
今年1冊目の本です。
近代史に興味がある方はとっても楽しめる内容でした。
らんたん あらすじ
■概要
「BUTTER」著者渾身の女子大河小説
大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。
彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだったーー。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09386624
私は、柚木麻子さんの本を読んだことがなく、朝井リョウさんと一緒に結婚式の余興をした人(※出典 朝井リョウ/風と共にゆとりぬ)というおもしろイメージしかありませんでした。
柚木さん自身が舞台となる恵泉女学園のご出身とのことで、この作品を書かれたそうです。
大河小説なので、ページのボリュームも結構あるのですが、とても読みやすい作品だと思います。
一言で言うと意志のある女性たちが理想の社会と学校を作っていくために駆け巡るお話なので、その時代の歴史に名を残した女性オールスターズが登場します。
例えば、初めて海外へ留学した女性として有名な津田梅子さんや、大山捨松さん、朝ドラでお馴染みの広岡浅子さんや村岡花子さん、白蓮さん、女性の地位向上を目指し活動した平塚らいてうさんや市川房枝さんなど近現代史で聞いたことあるぞ〜という偉人たちが登場するので、親しみやすくもありました。
私は、正直、高校で日本史を学んで以降、なぁーんもしてないので、色々忘れてしまっている人物も多かったのですが、以前に津田梅子さんをはじめとする女性使節団の本を読んだことや、朝ドラで『あさが来た』と『花子とアン』を観ていたのでバックグラウンドが分かりやすく、入り込みやすかったです。
特に津田梅子さんと大山捨松さんは、この物語でも重要なポジションで登場するので、興味のある方には、『少女たちの明治維新 ふたつの文化を生きた30年』をお勧めします。
■第一部
河井道の幼少期〜一色ゆりとの出会い、2人が女子教育のための学校を作る構想を共有する。
夢のために2人が奔走する過程を描く。
■第二部
関東大震災という未曾有の災害に見舞われながらも資金を集め、ついに2人の理想の学園、恵泉女学園を開校させる。
学園をスタートさせたものの日中戦争の開戦など時局はどんどん悪くなってゆく。
■第三部
第二次世界大戦が勃発し、道やゆりの教育理念とは相容れない状況となっていくものの、学園を閉校させないように守り抜く。
戦後、道は教育者として、あらゆる場面で女子教育の重要性を社会に浸透させようと奔走する。
らんたん 登場人物
先程書いたように、日本史オールスターズが出てきますので、登場人物を紹介しきれないのですが、メインとなる3人だけご紹介しますね。
■河井道
伊勢神宮の神職の娘であったが、父親が職を追われた影響で北海道に引っ越す。
そこで、キリスト教の女性が運営する女学校に通うようになったことで自身もクリスチャンになる。
その後、アメリカの大学に留学し、女子教育を日本にも普及させなければならないと考える。
シスターフッドである一色ゆりと出会い、2人で理想の学園を作るため奔走する。
https://keisenjogakuen.jp/ayumi/founder/
↑本のネタバレにもなるかもしれませんが、恵泉女学園のホームページに創設者 河井道のページがあるので、ざっくり知りたい人はこちらを参照してくださいね。
■一色ゆり
女子英学塾(現津田塾大学)での道の教え子。
教え子であるが、道とはシスターフッドの絆で結ばれ、自身も教育者として夢を叶えるための活動をする。
どんなときも道を支える道にとって唯一無二の存在。
■一色乕児(とらじ)
天璋院篤姫が名付け親であるゆりの夫。
ゆりと結婚する際、ゆりと道の絆のために3人で同居する案を承諾した。
2人の活動を裏から援助していた立役者。
イギリスに留学していたことがある無口な紳士。
ゆりとの間に義子という娘がいる。
らんたん ポイント
■シスターフッド(道とゆり、梅と捨松)
めっちゃ頻出単語、シスターフッドとは何かという話ですが、簡単に言うとイエスキリストの元に集う姉妹、血縁関係を持たない女性同士の絆のことだそうです。
概念としては、聖書の中で聖母マリアと同じく聖霊によって子を宿したエリザベトを頼ったように、血縁ではなくても姉妹のようにお互いを助け合える関係といったところでしょうか。
道とゆりは、教師と生徒という間柄から、お互いに惹かれ合い、唯一無二の存在だと認め合うようになります。
その絆を、女性のライフステージによって引き裂かれるのは納得いかない、それくらい強いものであると考えています。
だからこそ、ゆりが結婚するときに道との関係性も含めた結婚生活を乕児に提案したんですね。
それを認めた乕児の先進的なことよ!
また、道は自分が教育者として日本に光を灯すことを生涯求めており、未婚のまま天に召されました。
女性が結婚しないと生きていけない時代に自らの力で生きた道ですが、姉妹であるゆりが家族を持ちたいという気持ちを否定することなく、また、そのことが自分達を分かつものではないと考えているのもすごいですね。
その対比として、登場するのが津田梅子と大山捨松です。
彼女たちは、明治時代にたった5人でアメリカに渡った少女たちの中の2人でした。(しかも最終的に3人になっちゃう)
なにも分からない中で、留学中、互いに助け合った血縁のない姉妹です。
しかし、帰国後、アメリカから学んできた知識を日本の教育に生かそうと奮闘する梅子と政治家の妻として鹿鳴館の花と呼ばれるようになった捨松。
かつて唯一無二の姉妹であったはずの2人は、立場の違いから関係がうまく行かなくなってしまいます。
しかし、結局、梅が女子英学塾を開校し、捨松が支援を惜しまなかったのも2人の絆の証です。
■女子教育への灯火
先程から書いているように、日本の女子教育の先駆者として津田梅子が現在の津田塾大学を開校しますね。
それだけではなく、明治大正期にはキリスト教の宣教師たちがキリスト教主義のミッションスクールを設立しています。
道とゆりは、恩師津田梅子の女子英学塾とは違う、また他のどの学校とも違う、もっと伸び伸びとした自主性を重んじる教育を目指します。
それが、2人が作った恵泉女学園です。
例えば、公立の学校でもこの頃、英語の授業があった学校もあるようですが、恵泉では、英語での会話や劇や音楽など勉強というよりも、日常の楽しみの中で学習をすることができました。
しかも当時から、制服がなかったというから驚き!
また、その教育理念をとことん諦めない姿勢が素晴らしいですね。
戦争中は、キリスト教団体が母体の学校は閉校に追いやられましたが、キリスト教の学校連盟に加盟していなかった恵泉は閉校を免れただけでなく、閉校した学校に通っていた生徒たちの受け皿ともなります。
そんなご時世でもささやかにでも行事を行い、日常の喜びを忘れませんでした。
また、戦局が悪化し、生徒が労働に駆られるようになっても、隙間時間で英語の話をするなど、現在及び未来を見据えて決して教育を諦めませんでした。
戦後、道は教育者の代表として召集され、そこで今日に至るまで変わらない、教育の「男女平等」を掲げます。
その一方で、より早く女子の高等教育の普及を目指し、4年制大学ではなく、短期大学を設置するよう求めます。
何から何まで、女子の教育のために、自身が経験し、見てきたことを実践しようとしているところがすごいです。
らんたん 感想
■熱くて暖かい女たち
この物語には本当にたくさんの女性が登場して、皆、自分達が目指すビジョンが明確で問題意識も明確でかっこいいのですが、サラッと誰かを助けるところがじんわり暖かく感じました。
そして、手を取り合う、協力し合う、そっと手を貸す、といったことを誰もがやっているところがとても素敵で、それが、広義のシスターフッドなのだなぁと思いました。
私は、やはり、本の表紙にもなっているゆりさんのウェーブがかった髪の毛にリボンを巻いてあげる道先生のあの場面がとっても可愛らしくてとても大好きです。
作者の柚木さんのインタビューを引用します。
「最初に道先生について書きたいと言った時、〝一度も恋愛していないし、面白くないんじゃないか〟と言う方がいたんです。でも私は、そこが逆に新しいと感じました。道先生は当時としては長生きして、女性たちと一緒に自分がやりたいことをやった人なんです。それと、調べていくと、乕児さんの名付け親の篤姫にたどり着くんですよね。篤姫は大奥の3000人の女性たちの身の振り方を考えて尽力した人。そこから女性たちの活動の流れが始まっているんだなと感じました」
https://shosetsu-maru.com/interviews/quilala_interview/asakoyuzuki_rantan
恋愛がないと面白くないという言葉を道先生やゆりさんが聞いたら憤るでしょうね。
そういう価値観が今でもあるからこそ自由になれない人がたくさんいるというのにね。
ただ、柚木さんのおっしゃる通り、女性のために尽力した女性たちがいたからこそ、現代の私たちの地位があるのだと思います。
この物語では登場人物として、有島武郎や徳冨蘆花といった文豪も登場します。
私は、古典文学に詳しくないので、知らなかったのですが、明治大正期に流行した小説の多くで、登場人物の女性が不遇な立場に置かれることが多く、それが読者にウケる傾向にあったとのことです。
だからこそ、道は元気で明るい少女の物語『赤毛のアン』を待望していたのですね。
特に、徳冨蘆花に関しては捨松を意地悪な継母のモデル(大いに脚色している)として『不如帰』を発表し、ベストセラーになります。
しかし、その影響で、捨松は晩年まで誹謗中傷の対象となってしまいました。
作中では、梅子が徳冨蘆花に謝罪文を書かせ、死の床に伏せる捨松に、自分にとって彼女が特別な存在であると改めて告白し、2人のシスターフッドは永遠のものとなりました。
どこまでが史実で、どこからが脚色なのか分かりませんが、めちゃくちゃ熱くてよかったです。
あんまり物語には関係ないのですが、この徳冨蘆花、とても独善的というか利己的というかいやなやつでしたね。
実際の徳冨蘆花は、同志社で学んでいた頃に副校長の娘(新島襄の姪)と恋仲になりますが、それが認められず出奔します。
その出来事をもとにした小説を50歳近くなってから『黒い目と茶色の目』という作品で発表しており、それだけで素直にキモいのですが、相手の女性をミッションスクールに通う、妖艶な悪女として描いていて、さらに素直にキモいです。(しかも徳冨蘆花自身もクリスチャン)
多分、道先生やゆりさんはこの本を見てミッションスクールのイメージを傷つけたことや、女性を悪く描いたことに怒ったんじゃないかな??と勝手に思いました。
■現代女子教育への布石
個人的な話なのですが、私の母(60代)はどちらかというと裕福な家庭で育った人ですが、短期大学を卒業しています。
母の兄である伯父は、4年制の大学を卒業しています。
父も4年制大学を卒業していて、妹である叔母は短期大学を卒業しています。
学力に差があったとは思うのですが、その時代、女子の大学進学といえばやはり短大がスタンダードだったのではないかと思います。
先程、書いたように道は戦後、女子の高等教育が早く普及するように短期大学の設立を求めました。
一方で、それでは、女子の4年制大学への進学がなかなか普及しないのではないかと反対する人もいました。
個人的観測の範囲が狭いのですが、確かに、我が家の進学実績を見るとその通りになっていますね。
じゃあ、現在ではどうかと調べてみました。
今年60歳になる人が18歳だったのはちょうど昭和55年ですね。
やはり女性のグラフを見ると、4年制大学へ進学した人よりも短期大学へ進学した人の方が多いことが分かります。
また、大学と短大に進学した人の割合を見ても男性には全く及びません。
この時代でも、まだ女性に高等教育が必要ないと考える家庭が多くあったと考えられるので、学費も在学年数も少ない短大を推し進めたのは正解だったのかも知れません。
しかし、令和元年のデータで見ると、4年制の大学へ進学した女性の割合は男性にほぼ迫っています。
あぁ、道先生以降、たくさんの人が女子教育の発展に尽力してくださったんだなぁと思いました。
私も、兄がいますが、兄よりもお金がかかる大学に通わせてもらいました!親不孝!
■祖母と自分の過去に思いを馳せた
この本を読んでいるとき、ずっと母方の祖母のことを考えていました。
祖母は大正生まれの寺の子で、女子師範学校を出て、小学校の教師をしていました。
他に行きたい学校があったそうですが、曽祖父は祖母に手に職をつけさせたかったため師範学校へ行かせたそうです。
当時の日本人としては体躯がしっかりしていて身長が165センチくらいありました。
神職の娘でしっかりした体つきをしていた道先生と印象が少し被ります。
祖母の逸話は色々あるので、また別の機会に書きたいのですが、あの時代に男性と同じくらいお金を稼いで、激動の昭和の中で教師をしていた訳ですから、本当にすごい人だなぁと思いました。
年を取ってからも投資で色々やって、中国やモンゴルや韓国などいろんな国を旅行して、やはりバイタリティーが半端なかったですね。
あと、私自身はミッションスクール出身です。
ですが、恵泉のように、自由な校風ではなく、校則も厳しいし、シェアの精神を強制させるし、まだに良妻賢母とか言ってたと思うので、正直学校は嫌いでした。
ただ、キリスト教を信じる人の価値観とか文化などを学ぶことができたのでそこはよかったと思っています。
なんか感想というより自分語りばっかりになってしまいましたが、大学でもキリスト教教育について学んでいたので、この本はとても興味深く、楽しく読むことが出来ました。
ちょっと自分の卒論を引っ張り出して読んでみたのですが、第二次世界対戦中のキリスト教主義学校への風当たりは特に厳しく、天皇陛下の御真影に敬意を表さなかったとして、閉校に追い込まれたり、キリスト教徒が神宮に参拝しなかったことで不敬とされたりとたくさん事件があったようです。
そんな世の中で、道先生が学園を守り切ったことが本当に信じられないくらいすごいことだと改めて思いました。
長々と書きましたが、本当に面白かったです。
できれば男性に読んでもらって感想を聞きたいな。
次は芥川賞受賞作品、『彼岸花の咲く島』を読んでいこうと思っています。
では、また。