こんにちは。
昨日、炊飯器で釜飯を作ろうと思ったら、釜飯の素を入れ忘れて白米が3合炊けました。
さて、本日は本屋大賞受賞作、5月映画公開予定の『流浪の月』のブックレビューを書きたいと思います。
『流浪の月』あらすじ
最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。本屋大賞受賞作。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488803018
凪良 ゆう
滋賀県生まれ。2007年、『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には非BL作品『神様のビオトープ』を発表、作風を広げた。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。19年に刊行した『流浪の月』が、多くの書店員の支持を集め、2020年本屋大賞を受賞。おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『美しい彼』『ここで待ってる』『愛しのニコール』『薔薇色じゃない』『わたしの美しい庭』『滅びの前のシャングリラ』『すみれ荘ファミリア』がある。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488803018
凪良ゆうさんといえば、この作品で本屋大賞を受賞したことで有名ですよね。
私は、他に『滅びの前のシャングリラ』を読んだことがありますが、正直あまり刺さらなかったです。
今回、『流浪の月』は映画の予告編を見て、読んでみようかなと思い手を出しました。
『流浪の月』登場人物
ここから先はネタバレを含みますので、見たくない方は、浦学サンバでも聴いてください。
■家内更紗
9歳の少女。両親と暮らしていたが、父親の死後、母親が家を出て行ったため、伯母の家に住む。
中学2年の従兄弟の存在に悩まされており、ある日公園で文に声をかけられる。
15年後、24歳になっても過去の事件が彼女につきまとう中、亮という彼氏に結婚を迫られている。
■佐伯文
19歳の大学生。背が高く細い体格をしている。
雨の日に更紗を家に誘い、2ヶ月間共に生活をした。
部屋は整っており、規則正しい生活をしていたが、更紗と暮らすうちに規則が崩れていく。
15年後時点では、“calico”というカフェを経営しており、谷という恋人がいる。
『流浪の月』ポイント
■真実は2人しか知らない(+ストックホルム症候群の疑い)
文は誘拐、監禁の罪で逮捕されましたが、更紗に対して猥褻な行為をしていません。
そして、更紗も声をかけられて自ら文について行っているので、世間が思う、誘拐、監禁でもありません。
文は更紗に衣食住を提供し、“正しさ”から外れる生活を彼女から学びました。
そして、更紗は、伯母の家では得られなかった居場所を見つけることができました。
歪ではありますが、2人の間には世間が思うような加害者と被害者という関係ではなかったということです。
しかし、保護された後の更紗は、警察をはじめとする周囲から猥褻な行為をされたのではないかという目で見られます。
その事態を否定するたびにストックホルム症候群のように加害者を擁護する被害者として扱われ、PTSDに苦しんでいるとみなされました。
事件から15年が経った時点でも、更紗は同じ目で見られ続けています。
■15年後の邂逅
事件後、更紗は養護施設で育ちました。
大人になってからは、亮という彼氏と同棲をしながらアルバイト生活をしています。
亮という人物は、あまり更紗の意見を尊重しない人物であり、勝手に結婚の話を進めてしまいますが、更紗もそのままその流れに抗わずなぁなぁとついていこうとしています。
そんな中で文を見つけ、両親と暮らしていた頃の自由な更紗が顔を出し始めます。
一方、文も、実はインターネットの情報から更紗が住む街に住むことを決め、更紗の名前に由来する“calico”というカフェを経営していました。
つまり、2人ともお互いを忘れることができなかったということです。
特に、更紗は、文を見つけてから、カフェに通い詰めたり、文の家の隣に引っ越したりとアグレッシブになっていきます。
『流浪の月』感想
■肯定できるもんじゃない
私は、彼らの真実を知った上で、「何も知らない周囲の人」と同じなのだと思います。
人々が想像するような“それ”でなくても、小学生を誘拐してしまう時点で美しくもなんともないと思うのです。
文は自分の欲で更紗を家に連れ帰った訳ですから。
再会後、大人になった彼らは、2人だけの世界だけで得られる幸せを再度手にします。
それ自体はどうぞご勝手にという感じですが、やはり私の感想としては、彼らの背景を知った上でも子供を誘拐した時点で、何も肯定できるものがないと感じてしまいます。
例えば、映画 万引き家族でも、虐待をうけている女児を家に連れ帰って家族にするくだりがあるのですが、あの映画では、たくさんの社会問題の中、その幸せを肯定していいのか?否定していいのか?というメッセージが強く反映されていると思いますし、多くの視聴者がそのメッセージを受け取ることができる構成になっていると思います。
この『流浪の月』でも、文のことを肯定することで、更紗自身の保身になっているという構図があるのか、更紗は悪い意味で文に囚われているのではないかと読んでいる途中では思っていました。
しかし、作者の言葉では、ーふたりが楽に生きられる世界であるようにと願ってーとあり、それならばそのような意図はないですよね。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488803018
だとすれば、ご都合主義の少女漫画のようだと思いました。
■人物描写が微妙
大人になれば、だんだんと子供のころ疑問に思っていなかったことがおかしかったのだと気づく瞬間って多々あると思います。
例えば、更紗は自分を置いて行った母親のことは憎んでいないですよね。
でも、一番元凶と言えるのは、彼女の養育を放棄し、置いて行った母親だと思います。
そして、楽しかったかもしれないけれど、文が少女であった自分を2か月間家に置いておくのは大分ヤバいという事実にも気がつくはずです。
事実と真実は違うと言いますが、事実から目を逸らしているのは更紗と文だと思いました。
それから、更紗!
なんでDV彼氏から夜逃げするのに、職場も携帯も変えないんだ!?
しかもDV彼氏の心当たりがある場所に住んじゃうし!?
そして、彼女は、文と再会する前までは、異性と交際しない方が精神が安定するタイプに見えるのですが、なんで次々彼氏作っちゃうんだ!?
……という疑問も多々あってもやっとしました。
後、作者がこの物語を美しいものとして描いているならば、多分文はロリコンではないだろうなという予想も簡単についてしまい残念でした。
■タイトル『流浪の月』の意味とは?
タイトルの意味を考えてみたのですが、パッとした答えは浮かびませんでした。
流浪は、るろ剣と同じ、さすらいとかふらふらしたという意味ですよね。
夕食にアイスを食べたり、女の子さらってみたり、かつての誘拐犯と一緒にいたりとか……正しさや常識から外れるというこの本のテーマを意味しているのが分かります。
あるいは、身元が周囲に知られるたびに住居を変えないとならない2人のカルマのことかもしれません。
では、月ってなんでしょうか?
こちらも、移ろいゆくとか同じ姿ではないとかそういう意味が込められているのでしょうか?
でも月って、地球から見れば満ち欠けをするけれど、実際は丸い天体なので、真実は一つだけれど、いろんな見方ができるということの暗喩なのでしょうか?
この本のもう一つのテーマ、真実と事実は違うに当てはめられるかもしれません。
辛口になってしまってごめんね
楽しんで読んだ方には非常に申し訳ないけれど、ストーリーとしてはご都合主義が過ぎて面白くなかったです。ごめん。
でも、文章はとても綺麗で、読みやすい本だったと思います。
さて、こちら映画が5月公開とのことですが、更紗役に広瀬すずさん、文役に松坂桃李さんだそうです。
広瀬すずちゃん声や出立ちが可愛いからあんまり大人っぽく見えないけど大丈夫でしょうか!?
今日めちゃ文句多くてごめんね!ほんとごめん!
では、また。
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