そういえば、今の家に引っ越してきてから1年が経った。
私たち夫婦は、2年の別居婚を経て去年の今頃から同居を始めた。
なぜ、別居だったかというと、夫の転勤がどこになるか分からなかったからだ。
当時、私は地元に住んでおり、夫は隣県に住んでいた。
夫の勤務地次第では、私が社内で別の営業所に異動したり、夫が私の地元に来る可能性もあったのだ。
結果、二人にとって縁もゆかりもない土地への転勤だったため、私は退職して夫と同居を始めることにした。
こうして、私は1ヶ月先に移住していた夫の元へと向かった。
夫は、一人暮らし歴が長かった。
話を聞いているところ、家事は一通りできるようだったので安心していた。
そう、安心していたのだ。
しかし、私を待ち受けていたのはこの光景であった。
カーテンである。
否、カーテンではない。
このビニールシートをカーテンと認められる程、私は成熟した大人ではなかった。
夫は1ヶ月間このままで生活していた訳である。
カーテンに要求される機能は、部屋の中が見えないことだ!という夫の主張からこの姿のままだった。
その上、すでに注文して届いていた天井のライトも設置せず、ちゃぶ台にテレビを置いただけの部屋で生活していた。
その日、この光景を目にした私は、えらいとこに来てしまった!と思い泣いた。
私は、人との同居というより、男の一人暮らしをなめていた。
いや、男の一人暮らしというより、ここまで夫がミニマムに生きられる人間であることを忘れていたのだ。
夫としては、私が来てから一緒に家財道具を揃えようとしていてくれたのだが、その気遣いがかえって私をホームシックにさせた。
ビニールシートはテープで留めていたため、定期的に外れ、さらに私の不安を誘った。
家財道具が一式揃うまでに2ヶ月程はかかったと記憶しているが、私はその間、なんでこんな変なところにいるんだろうかと少しも落ち着かなかった。
保護猫の気持ちだった。(多分)
あれから1年が経ち、あらゆる部屋を私が散らかすので、ミニマルな部屋は雑多な部屋へと変貌したのである。
ようやく自分の家という気がしてきた。